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30/70 TRENTA SETTANTA(トレンタセッタンタ)|第一ニット・干場義雅|LAMPA




30/70 TRENTA SETTANTA(トレンタセッタンタ)




日本で唯一稼働するドイツ製フルファッション編機を持つ、世界に誇るニットファクトリー。

その技術と干場義雅氏の美意識が結びついて生まれた「究極の普通」。




世の中には、ブランドの名前が広く知られていても、その服を実際に作っている工場の名前はほとんど知られていないということがある。特にニットの世界では、どれほど優れた製造技術を持っていても、その技術を支える工場が表舞台に出る機会は決して多くない。


しかし、服を長く見続けていると、ブランドの知名度とは別のところに、その服の価値を決定づけるものがあると感じる。素材の選び方、編み目の整い方、袖の収まり、身体に沿うシルエット。何の装飾もないシンプルなニットほど、作り手の技術がそのまま表れる。


そんなニット製造の世界で、国内外の高級メゾンブランドの生産を手掛けてきた工場が、新潟県見附市にある。第一ニットマーケティング株式会社。日本国内で唯一稼働するドイツ・シェラー社製30ゲージフルファッション編機をはじめ、高度な製造設備と職人の技術を受け継いできた日本のニットファクトリーである。


その第一ニットが2020年に立ち上げたファクトリーブランドが、30/70 TRENTA SETTANTA(トレンタセッタンタ)。ファッションディレクターに干場義雅氏を迎え、素材と仕立ての完成度を追求する「究極の普通」を掲げて誕生したブランドである。



1887年に遡る事業のルーツ。日本のニット産地、新潟県見附市で磨かれた製造技術




30/70 TRENTA SETTANTAを語るうえで、まず知っておきたいのが第一ニットという工場の歴史である。


その事業のルーツは1887年、明治20年にまで遡る。生糸を扱う糸商から始まり、織物、そしてニットへと事業を発展させてきた。1951年には前身となる近藤織物株式会社を設立し、1970年に第一ニット株式会社へ改称。1987年には第一ニットマーケティング株式会社が設立された。


新潟県見附市は、古くから繊維産業が発展してきた地域である。第一ニットもまた、糸を扱う商いから織物、ニット製造へと事業を発展させながら、時代に応じた設備と技術を積み重ねてきた。


その歴史のなかで大きな転機となったのが、ハイゲージニットの製造技術を追求するためのフルファッション編機の導入である。


フルファッションとは、編み目を増減させながら、身頃や袖を必要な形に編み上げるニットの成型技術。英国の老舗ニットブランドJOHN SMEDLEY(ジョンスメドレー)でも長年採用されてきた製法として知られている。


一般的な裁断縫製のニットでは、編み上げた生地を型紙に合わせて裁断し、それぞれのパーツを縫い合わせて形を作る。一方、フルファッション製法では、編み目そのものを増減させることで、身頃や袖の輪郭を編みながら形成していく。


この違いは、完成した服の作りにも関わってくる。裁断によって形を整えるのではなく、編み目の配置を計算しながらパーツを作るため、編み地の連続性を生かした仕立てが可能になる。肩や袖、脇の収まりを考えながら形を設計できることも、この製法の特徴である。


その一方で、糸の性質や編み目の増減、編み上がり後の寸法変化まで理解していなければ、狙った形に仕上げることは難しい。機械の性能だけでなく、素材を知り、編み地を知り、完成した服の形を理解する技術が求められる。


第一ニットは、こうしたニット製造のなかでも、極めて細かな編み目を持つハイゲージニットに強みを持つ工場として、その技術を磨き続けてきた。



日本で唯一のドイツ・シェラー社製30ゲージフルファッション編機。その希少性と編み地の違い




第一ニットの技術力を象徴する存在が、ドイツ・シェラー社製30ゲージフルファッション編機である。


ゲージとは、編機の針の密度を表す単位。一般的なローゲージニットが5ゲージや7ゲージ、ハイゲージニットが12ゲージや16ゲージといった細かさで編まれるのに対し、30ゲージはさらに繊細な編み目を形成する領域にあたる。


そして、このドイツ・シェラー社製フルファッション編機を日本国内で現在も稼働させているのは、第一ニットだけである。これは第一ニット自身が公式に公表しているもので、フルファッション編機全般ではなく、同社製の特殊な編機についての希少性を指している。


第一ニットは、この30ゲージ編機を5台保有している。


この機械の興味深いところは、単に編み目が細かいというだけではない。一般的な横編機とは、編み地を作る仕組みそのものが異なるのである。


第一ニットの技術解説によれば、一般的な横編機では編み地を下方向に引きながら編み進めるのに対し、このフルファッション編機では編み地を水平に編み進める。編み地に強い張力を掛けずに編むことができ、編み目が丸みを帯びた形に仕上がるという。


この編み目の形状が、着用時の感覚にも関わってくる。編み目が伸びた後に元の形へ戻ろうとする力を生かすことで、細かな編み目が密に並んだ生地でありながら、しなやかな伸縮性と回復性を備えた編み地を作ることができる。


つまり、30ゲージという数字だけでは、この編機の特徴を十分に説明できない。細い糸を使って繊細な編み地を作ることに加え、編み目の形状や張力の掛かり方まで含めて、完成した生地の質感を作り出しているのである。


さらに、この編機は一度に複数枚のパーツを編み上げることができる。一般的な横編機とは異なり、複数の編成区画を持つ長大な機械によって、編み地を同時に編み立てる構造である。


その反面、編める組織は基本的にフラットな天竺編みに限られる。複雑な柄を自由に編み出すための機械ではなく、均一で美しい編み目を作ることに特化した設備なのだ。


しかも、この編機は使用する糸との相性が非常に重要になる。第一ニットの公式説明でも、糸と機械の相性が悪ければ編み目が揃わず、細かなシボが生じることが紹介されている。


高価な糸を使えば必ず美しい生地ができるわけではない。糸の太さや性質を理解し、機械との相性を見極め、均一な編み目に仕上げる。その判断には、長年の製造経験が必要になる。


ここで重要なのは、希少な機械を所有していることと、その機械を現在も動かし、美しいニットを安定して製造できることは、まったく別の話だという点である。


第一ニットの価値は、特殊な設備そのものだけでなく、それを使いこなす技術者の経験が工場の中に蓄積されていることにある。



編み立てからリンキング、アイロンまで。職人の手によって完成する一着




そして、第一ニットの凄さは編機だけではない。


一着のニットを完成させるまでには、編み立て、パーツの接合、縫製、仕上げ、検査といった数多くの工程がある。第一ニットが紹介する30ゲージフルファッション製品では、完成までに30以上の工程を必要とするという。


そのなかでも、ニットの着心地や見た目を左右する重要な工程の一つがリンキングである。


リンキングとは、編み上がったパーツの編み目を一目ずつ拾い、専用の機械でつなぎ合わせる技術。一般的な縫製のように生地の端をまとめて縫うのではなく、編み目の位置を合わせながら接合するため、つなぎ目の収まりを整え、編み地の伸縮性を生かした仕立てにつながる。


特にハイゲージニットでは、一つひとつの編み目が非常に細かい。正確に目を拾うには集中力と経験が必要であり、接合部分の仕上がりは職人の技術に左右される。


ニットは身体の動きに合わせて伸び縮みする服である。だからこそ、パーツ同士をつなぐ部分が不自然に硬くなったり、編み目の流れを妨げたりすれば、着用時の感覚にも影響する。目立たない接合部分にこそ、丁寧な仕事の意味がある。


さらに興味深いのが、仕上げのアイロン工程である。


ニットは編み上がった時点で、すべてが完成するわけではない。蒸気と熱を使って編み地を整え、肩や胸、袖などの形を調整しながら、実際に人間が着る服として仕上げていく。


ここで行われるのは、単にシワを伸ばす作業ではない。平面的な編み地を、身体に沿う立体的な服へと整える工程である。


肩の位置が自然に収まり、袖が身体に沿って落ち、身頃に不必要な膨らみが生まれない。そうした着用時の輪郭は、編み立ての段階から仕上げまで、それぞれの工程が正確に行われて初めて成立する。


第一ニットは、原料の調達から企画、編み立て、縫製、仕上げ、検査までを自社工場で一貫して行う体制を持つ。素材と製造工程を切り離さず、一着の完成度を工場全体で追求できることも大きな強みである。


第一ニットが持つ30ゲージフルファッション編機は、工場の技術力を象徴する設備の一つである。ブランドでは素材や製品の設計に応じて異なるゲージや編み組織を使い分けており、すべての商品が同じ編機で作られているわけではない。


大切なのは、特定の機械だけで服の価値が決まるのではなく、素材に適した設備を選び、編み地を設計し、最後の仕上げまで完成度を追求する技術があることだ。



カシミヤ70%、シルク30%。ブランド名そのものになった素材へのこだわり




そして、30/70 TRENTA SETTANTAというブランドには、もう一つ非常に面白い話がある。


それが、ブランド名そのものの由来である。


30/70という数字は、シルク30%、カシミヤ70%という素材の混率を表している。TRENTA SETTANTAは、イタリア語で30と70を意味する言葉。つまり、このブランドは、素材の配合そのものを名前に掲げているのである。


カシミヤは、繊細な繊維による柔らかさ、ふくらみ、保温性を特徴とする高級天然素材。一方のシルクは、滑らかな肌触り、しなやかさ、繊維特有の自然な光沢を持つ素材である。


カシミヤを70%使用することで、その柔らかさやふくらみを主体としながら、30%のシルクによって滑らかさや光沢を加える。それぞれの繊維が持つ異なる特徴を、一つの編み地の中で組み合わせるという考え方である。


カシミヤだけで作られたニットとも、シルクだけで作られたニットとも異なる質感を目指した配合であり、柔らかさ、滑らかさ、ふくらみ、光沢という複数の要素を、一つの素材の中で成立させようとしている。


そして、この混率を単なる商品仕様として扱うのではなく、ブランドそのものの象徴にしたところが興味深い。デザインやロゴよりも先に、肌に触れる素材の心地よさをブランドの中心に据えている。


現在の30/70では、カシミヤとシルク以外にも、コットンやリネンなど、製品の目的に応じた素材が展開されている。ブランド名の30/70は、すべての商品に共通する混率を意味するのではなく、ブランドが誕生した時の素材への考え方を表しているのである。


素材の混率をブランド名にする。これは、製造技術と素材の品質に自信を持つファクトリーブランドだからこそ、説得力を持つ発想ではないだろうか。



干場義雅氏の美意識と第一ニットの技術が結びついた「究極の普通」




では、その素材へのこだわりを、誰が、どのような服として形にしようとしたのか。


30/70 TRENTA SETTANTAが誕生したのは2020年。ブランドの立ち上げには、男性ファッション誌LEONやOCEANSなどに携わり、FORZA STYLEでも知られるファッションディレクター、干場義雅氏が参加した。


干場氏は、ファッション誌の編集やディレクションを通じて、男性の服装を長年提案してきた人物である。その服選びの根底にあるのは、流行や装飾に頼るのではなく、素材、着心地、シルエットといった服の基本的な完成度を大切にする考え方だ。


そんな干場氏と第一ニットを結びつけたのが、日本のニット製造技術の高さである。


干場氏はブランド公式のメッセージのなかで、第一ニットの工場を取材した際、世界的な高級ブランドのニットを手掛ける製造技術と、職人たちの仕事に対する姿勢に感銘を受けたことを語っている。


そして、その技術によって生み出されるニットを、もっと多くの人に知ってもらいたいという考えから、日本貿易振興機構(JETRO)新潟事務所と協力し、新しいファクトリーブランドを立ち上げることになった。


ここで注目したいのは、単に著名なファッションディレクターの名前を冠したブランドではないという点である。


すでに高度な製造技術を持つ工場があり、その技術をどのような服として世の中に届けるかという課題がある。そこに干場氏の服に対する考え方が加わることで、30/70 TRENTA SETTANTAというブランドの方向性が生まれたのである。


ブランド立ち上げ当初、干場氏はシルク30%・カシミヤ70%の素材の魅力を最大限に伝えるため、色や柄を排除し、黒の無地だけに絞ったことを説明している。形もクルーネック、タートルネック、Vネックなど、長く親しまれてきた基本的なデザインを採用した。


これが「究極の普通」という考え方である。


シンプルなニットを作ること自体は難しくない。しかし、誰もが知っている基本的な形を、素材の良さ、編み地の美しさ、着用時の輪郭まで含めて高い完成度で作ろうとすれば、作り手の技術が問われる。


例えば、同じクルーネックでも、首元の開き方やリブの収まりによって、着た時の印象は変わる。肩の位置や袖の落ち方、身頃の幅と着丈の関係によっても、全体の輪郭は違ってくる。


それらを過剰な装飾で補うのではなく、基本的な設計と仕立ての精度によって整えていく。第一ニットが積み重ねてきた製造技術は、そうした服作りを支えるための大きな力となる。


そして、このブランドのもう一つの意義は、日本の工場が持つ技術を、自らの名前で発信することにある。


国内外のブランドから製造を請け負うだけでなく、自社の技術を背景にしたブランドを立ち上げ、製品そのものを通じて価値を伝える。30/70 TRENTA SETTANTAは、第一ニットが長年培ってきたものづくりを、消費者へ直接届けるための取り組みでもある。


ブランドは国内での販売に加え、海外展示会への出展にも取り組んできた。日本のニット製造技術を、世界に向けて発信するという立ち上げ当初の考え方が、ブランドの活動にもつながっている。



LAMPAが30/70 TRENTA SETTANTAを紹介する理由




LAMPAでは、こうした背景を持つ30/70 TRENTA SETTANTAを、単に高級素材を使用したニットブランドとして紹介したいわけではない。


服を長く見続けていると、デザインの新しさやブランドの知名度だけでは測れない価値があると感じる。特にニットは、素材の質感、編み目の整い方、縫い合わせ部分の収まり、身体に沿う輪郭といった細かな部分の積み重ねが、着た時の印象を大きく左右する服である。


第一ニットには、そうした部分を追求するための設備と技術がある。そして30/70には、その技術を生かしながら、日常で着る服としての完成度を追求する考え方がある。


日本で唯一の特殊な編機を持つことも、国内外の高級メゾンブランドの製造を手掛けてきたことも、確かに大きな魅力である。しかし、最終的に大切なのは、その技術が一着の服にどう表れているかということだ。


編み目の美しさ、身体に触れた時の質感、肩や袖の自然な収まり。そうした部分に製造技術が表れているからこそ、シンプルなニットにも選ぶ理由が生まれる。


そして、30/70 TRENTA SETTANTAをLAMPAで紹介することになったきっかけは、第一ニットの社長からInstagramを通じて直接連絡をいただいたことだった。


作り手から直接声を掛けていただき、その背景にある技術や服作りの考え方を知る。これは、長く服を扱ってきた店としても大切にしたい出会いである。


特別な装飾があるわけでも、ひと目で製造技術のすべてが分かるわけでもない。だからこそ、その服がどこで、どのような技術によって作られ、何を大切にしているのかを伝える意味がある。


第一ニットが長年積み重ねてきた製造技術と、干場義雅氏が掲げる「究極の普通」。その両方を知ったうえで実際のニットに触れると、シンプルな服を見る目も少し変わってくるはずである。




30/70 TRENTA SETTANTA(トレンタセッタンタ)をLAMPAで紹介することになったのは、作り手である第一ニットから直接声を掛けていただいたことが始まりでした。長い歴史のなかで培われてきた技術を、工場の名前とともに伝えられることにも、このブランドを扱う意味があると考えています。実際に袖を通した時の素材の質感や、身体に収まるシルエットまで含めて、第一ニットの仕事を感じていただきたいニットです。東京・高円寺のLAMPAにて正規取扱しており、店頭およびオンラインショップでご購入いただけます。




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