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ORDINARY FITS EMBROIDERY INLAY
CS044
古着に求める、あの初期衝動を新品で。
スウェットでもロンTでもない生地まで含めて、ORDINARY FITSらしい一着。
センスの良い古着屋で、ごく稀に出会うリメイクスウェットがある。
古着屋が商品として手を加えたものではない。当時の誰かが、自分で着るために袖を切ったり、刺繍を入れたり、自分の感覚だけを頼りに手を加えたものだ。
売れるかどうかなんて関係ない。ただ「自分はこう着たい」という気持ちが先にある。 だからこそ、そうした初期衝動から生まれたリメイクの中には、今見ても驚くほど格好良く、ときにプロが計算して作った服とは違う強さを感じるものがある。
ORDINARY FITSのEMBROIDERY INLAYを見て感じるのも、まさにそこ。 VINTAGEスウェットをベースにしたゆったりとしたシルエットに、首元には職人の手作業によるセンスの良い配色の刺繍。そして袖はあえてのカットオフ。新品でありながら、当時の誰かが自分のために手を加えたリメイク古着を思わせる。
それでも、古着そのものを作ろうとしているわけではない。 デニムやワークウェアを背景に持ちながら、それをそのまま土臭い方向へ持っていかないORDINARY FITSらしい感覚が、ここにもきちんと残っている。 LAMPAでこの一着を選ぶ価値を感じたのも、単に刺繍やカットオフが面白かったからではない。古着で見てきた格好良さを理解しながら、今着る新品の服として成立させている、その加減に惹かれたからだ。
生地には、インレイ編みという手法を用いたコットン100%の生地を使用。 一見するとスウェットに見えるが、触ってみると少し違う。スウェットほど厚くなく、Tシャツほど薄くない。それでいてペラッとせず、適度なハリとしっかりとした手触りがある。
この独特な生地感に、インレイという編み方が効いている。 通常の天竺が糸のループによって編地を作るのに対し、インレイはベースとなる編地に別の糸を横方向へ這わせるように挿入する構造。その糸が横方向への伸びを抑えることで、ニットでありながら生地にハリと安定感を持たせている。
面白いのは、単純に生地を厚くしてしっかりさせているわけではないこと。 一般的な裏毛のように膨らみで肉感を出すのではなく、厚みを抑えながらコシを作る。そのためスウェットのようなしっかりとした安心感がありながら、必要以上にモコモコしない。逆にTシャツのように身体へ落ち過ぎることもない。服を長く見続けていると、理屈を知るより先に触った瞬間に「この生地、良いな」と感じるものがあるが、このインレイはまさにそれだ。
そして、この生地だからこそ、ゆったりとしたシルエットにも意味が出る。 身体に沿って落ちるだけではなく、適度なハリによって身幅のゆとりがそのまま輪郭として残る。VINTAGEスウェットをベースにしたボリュームを持ちながら、厚手のスウェットほど重たく見えない。この服の見え方まで考えると、インレイを選んだ理由がよく分かる。
この服を決定的にしているのが、首元の刺繍と袖のカットオフ。 首元には職人の手作業によって、センスの良い配色の刺繍が施されている。機械で均一に入れた装飾とは違い、人の手が入ることで、完成されたスウェットへ後から誰かが手を加えたような感覚が生まれている。
さらに袖は、綺麗に始末するのではなく切りっぱなし。 普通なら完成度を高めるために整える部分を、あえて整え切らない。首元の刺繍とこのカットオフが組み合わさることで、「最初からこういうデザインとして作りました」という服とは少し違う、リメイク古着特有の偶然性を感じさせる見え方になっている。
ここを過剰にやってしまえば、単なる古着風のデザインになってしまう。 けれどORDINARY FITSは、インレイ生地のフラットな表情とゆったりしたシルエットを土台にしているから、刺繍やカットオフを入れても土臭さだけが前へ出ない。ラフな要素を使いながら、全体の見え方はきちんと整理されている。
この服が面白いのは、VINTAGEスウェットを忠実に復刻したものではないところにある。 インレイという生地を選び、VINTAGEスウェットをベースにしたゆったりとしたシルエットを作り、そこへ職人による刺繍とカットオフを加える。古着で見てきた格好良さをORDINARY FITSなりに解釈し、新品の服として組み直している。
年代や希少性だけではなく、誰がどうしてこうしたのか分からないのに、服そのものから強烈にセンスを感じる。 完成されたプロダクトとは違い、個人の感覚や初期衝動がそのまま残っている。LAMPAが古着に求めてきたものの一つも、まさにそこにある。
生地にはしっかりとした安心感がありながら、厚過ぎない。Tシャツ以上、スウェット未満という本当に丁度良い肉感に、ゆったりとしたシルエット、手刺繍、そして切りっぱなしの袖。その一つひとつが重なって、センスの良い古着屋で極稀に出会う、あのリメイクスウェットの空気を感じさせてくれます。まさにLAMPAが古着に求めてきたものを、ORDINARY FITSが新品でやってくれました。こういう服を作ってくるところが、やっぱり流石です。