■STILL BY HAND
ブランド名のSTILL BY HANDは、直訳すると「いまだに手で」という意味。
洋服は、いくつもの人の手を経て生まれるもの。その服作りの原点を大切にするという思いが、ブランド名に込められています。
一見するとシンプルでありながら、実際に着ていく中で初めて気付く工夫やこだわり。そんな細部にまで丁寧に向き合った洋服を作り続けているブランドです。
■Lampaの見解
STILL BY HAND NYLON HOODED PARKA
BL03263
ありそうで、ない。出来そうで、出来ない。
その緻密な足し引きこそ、STILL BY HANDの真骨頂。
服を長く見続けていると、デザインを加えることよりも、どこで止めるかを判断することの方が難しいと感じる。特徴的なディテールを取り入れれば、それだけ服の個性は強くなる。しかし、ひとつのデザインを目立たせ過ぎると、今度はその部分ばかりが目に入ってしまう。素材、形、ディテール、それぞれに面白さを持たせながら、一着の洋服として自然に成立させる。その加減が実に難しい。
STILL BY HANDは、そんな難しいことを何気なくやってしまうブランドだと思う。決して奇抜なデザインではない。むしろ一見すると、ごく普通の洋服に見える。それなのに、細部を見ていくと、どこか他の服とは違う。大きく主張する部分があるわけでもないのに、全体として独特な形になっている。普通に見えること自体が、緻密な設計によって生まれている。そこが、このブランドの面白さだ。
今回のNYLON HOODED PARKA BL03263も、まさにそんな一着。デザインソースは、ミリタリーのSNOW PARKA。雪上での迷彩を目的に、防寒装備の上から着用するために作られたオーバーガーメントである。大きなフードやゆとりのあるシルエットは、元々その用途から生まれたもの。STILL BY HANDは、そうしたミリタリーウェア特有のボリュームを取り入れながら、素材の選択と細部の設計によって、まったく違う印象のナイロンパーカへと仕上げている。
まず良いのが、生地の選択。使用しているのは、ややシボ感のあるナイロン素材。撥水性、防風性といった機能を備えながら、適度なハリ感を持ち、表面は一般的なナイロンに見られるツルッとした均一な質感ではなく、細かな凹凸を感じさせるナチュラルな仕上がりとなっている。
このシボ感が、実にいい。表面に細かな凹凸があることで光の反射が均一にならず、見る角度や生地の重なりによって微妙な陰影が生まれる。単色のナイロンでありながら、どこか奥行きのある独特な表情。滑らかなナイロンなら、もっとスポーティーでハイテクな印象になったはずだし、反対にヴィンテージの質感を強く意識した素材なら、ミリタリー色が前面に出ていただろう。
そして、生地の色も良い。真っ白ではなく、ほんの少しアイボリーがかった柔らかな色合い。雪上での迷彩を目的としたSNOW PARKAの白をどこか思わせながら、そのままの白にはしない。このわずかな色の違いによって、ミリタリーウェアの面影を残しながら、現代の洋服として自然に馴染む色に仕上がっている。デザインソースを形だけでなく、色からも感じさせる。そのさりげない選択にも、STILL BY HANDらしさが表れている。
さらに、適度なハリ感があることで、ボリュームのあるフードや首元の形が綺麗に立ち上がる。柔らかく垂れ下がるのではなく、生地そのものが立体的な形を支えている。今回のようにフードや袖にボリュームを持たせたデザインでは、このハリ感が大きな意味を持つ。シボ感による奥行き、SNOW PARKAを思わせる色合い、そして形を綺麗に保つ適度なハリ。素材の選択そのものが、今回のデザインを成立させる重要な要素となっている。
デザインでまず目を引くのが、SNOW PARKAを思わせるボリュームのあるフード。元々のミリタリーウェアが持つ大らかな形を残しながら、首元にはボタンで留める洒落た仕様を取り入れている。フードの生地を首元で重ね合わせ、ボタンを留めることで立体的な形を作る設計。さらに適度なハリ感のある生地によって、首元が綺麗に立ち上がり、大きなフードが単に背中へ垂れ下がるのではなく、首元そのものにデザインとしての面白さを生み出している。
しかも、このボタンを外すと首元が開き、フードが襟のように広がる。ボタンを留めた時の包み込むような形と、外した時の開放的な形。同じフードでありながら、首元の見え方が変わる。SNOW PARKAのボリュームをそのまま再現するのではなく、そこにSTILL BY HANDらしい工夫を加えているところが面白い。
そして、フードと同じくらい注目したいのが袖の設計。袖はやや太めに設定しながら、タックを取ることで立体的な形に仕上げている。単に袖幅を広げるだけでは、生地が余って平面的な印象になりやすい。そこにタックを加えることで生地の分量に変化をつけ、袖そのものに自然な膨らみを生み出している。ゆとりを持たせた袖でありながら、形がだらしなく崩れず、横から見た時にも独特な立体感が感じられる。
さらに上手いのが、その袖口。やや太めに作った袖を、袖口のスナップボタンで留めることによって綺麗に収める設計となっている。袖全体の量感は残しながら、手首の部分でボリュームを収束させる。太い袖を太いまま終わらせない。この小さな工夫によって、ミリタリーウェアらしい大らかさと、着用時の整った輪郭が両立している。
そして、もうひとつ見逃せないのが背中のデザイン。背面には、コートを思わせるヨークの切り替えを採用している。こうしたゆとりのあるパーカは、前から見るとフードや袖に特徴があっても、後ろから見ると大きな一枚の生地が広がるだけで、どこか単調になってしまうことがある。
そこで背中にヨークを設けることで、広い背面に横方向の切り替えが生まれ、後ろ姿にもさりげない変化が加わる。しかも、その切り替えは過度に主張するものではなく、コートを思わせる落ち着いた見え方につながっている。前から見た時のフード、横から見た時の袖、そして後ろから見た時のヨーク。それぞれに特徴を持たせながら、全体ではひとつの自然なシルエットに収まっている。
ここに、STILL BY HANDのデザインの面白さがある。SNOW PARKAという存在感のあるミリタリーウェアを出発点にしながら、元の形を忠実に再現することにはこだわらない。必要なボリュームは残し、首元や袖には独自の設計を加え、背中にはコートを思わせるディテールを取り入れる。そして、それらをシボ感のあるナイロンでひとつにまとめる。ミリタリーをデザインソースにしていることは分かるのに、ミリタリーウェアそのものには見えない。その仕上げ方が実に上手い。
ボリュームのあるフードが首元で綺麗に立ち上がり、タックによって立体的に形作られた袖は手首ですっきりと収まり、背中のヨークが後ろ姿にさりげない変化を加える。そこに、独特な奥行きを持つアイボリーがかったナイロンが重なることで、ミリタリーの力強さを感じさせながらも、日常の洋服として自然に着られる一着に仕上がっています。ひとつひとつのディテールは決して大げさではないのに、全体として見ると他にはない形になっている。そんなSTILL BY HANDの緻密なデザインと、服作りの上手さを実感できるナイロンフードパーカです。
■Style
Tops STILL BY HAND プルオーバーパーカ CS05253 48サイズ着用
Pants STILL BY HAND ウールサージ1タックパンツ PT07264 46サイズ着用
STILL BY HAND 通販・取扱い商品一覧